166 研究系及び研究施設の現状
海老原 昌 弘(助教授)
*)
A -1)専門領域:錯体化学
A -2)研究課題:
a) 新奇イリジウム複核錯体の合成に関する研究
b) 第9族三核クラスター錯体の電子状態と反応性に関する研究
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) 報告例の非常に少ないランタン型イリジウム複核錯体の合成法を開発し,その物性を明らかにすべく研究を行っ てきた。市販の塩化イリジウム酸から1段階反応でイリジウム原子間に単結合を持つイリジウム(II)複核錯体を合 成する方法を見いだし,さらにこれにより合成した複核錯体の軸位の配位子を様々に変化させることにより電子 状態が変化することを明らかにした。
b) 金属クラスター骨格の1つの基本形である三角型の第9族三核クラスター錯体の電子状態に関して研究を行い,酸 化による構造変化,1H NMR常磁性シフト,DFT計算などによりそのHOMOの軌道を明らかにした。また,これ らの錯体の反応性に関しての研究も行い,銀(I)塩やハロゲンとの反応によりこれらがコバルト−コバルト間を架 橋した構造が生成することを明らかにした。
B -1) 学術論文
N. KANEMATSU, M. EBIHARA and T. KAWAMURA, “Preparation, structure and electrochemical behavior of dinuclear
cyclooctadiene-chelated Ir(I) complexes with 2-aminopyridinato bridges,” Inorg. Chim. Acta 292, 244-248 (1999).
N. KANEMATSU, M. EBIHARA and T. KAWAMURA, “A one-step synthesis of an Ir(II) dinuclear complex. Preparation,
structures and properties of bis(µ-acetato)dichlorodicarbonyldiiridium(II) complexes,” J. Chem. Soc., Dalton Trans. 4413- 4417 (1999)
S. KATO, N. KITAOKA, O. NIYOMURA, Y. KITOH, T. KANDA and M. EBIHARA, “Heavy Alkali Metal
Arenedithiocarboxylates: Dimeric Structure and Nonbonding Interaction Between The Metals and Aromatic Carbons,” Inorg. Chem. 38, 496-506 (1999).
C ) 研究活動の課題と展望
近年,金属クラスター骨格を用いた新たな3次元ネットワーク系の構築が盛んに行われている。ランタン型イリ ジウム複核錯体は同族のロジウム複核錯体と比べて合成例が極めて少ない。一般的に,金属原子間,金属原子− 配位子間の結合は周期表下位の原子同士で強くなることが期待でき,報告されているロジウム錯体の性質から考 えてイリジウム錯体ではより強い相互作用による新たな性質が期待される。以上の点から,まず現在はまだ確立 されていない合成法を開発することが必要である。第1段階としての複核錯体ユニットの合成に成功しているの で,これをさらに発展させ多くのイリジウム複核錯体を合成し,新たなイリジウム錯体の化学を展開させて行き たい。
*)1999 年 4 月 1 日着任